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2011年 12月 08日

田代島猫景色(続編 34) 田代島の猫の数は?

田代島には、一体何匹の猫がいるのか?

よく話題になります。また、よく聞かれます。50匹という人もいれば、100匹という人もいる。
特に今年は、震災の影響で一体何匹の猫が被害にあったのか?またその後のシビアな環境の中でどれだけの猫が頑張って生き延びてくれたのか?とても心配でした。
島の漁師さんの中でも数十匹の猫が被害にあったんじゃないか、という声もありましたし、震災後に島に訪問した方の中では猫は50匹以下に減ってしまったのではないか、という見解もありました。
僕が7月に訪問した際には、まあ、支援の打ち合わせが主体であまり猫たちを探して歩かなかったためもあるのですが、出会えた猫はかなり数少なく、これは相当減ってしまったかもしれない、と心配しました。
その後、8月から獣医師のクレスさんと猫達の健康/医療管理のボランティアで毎月訪問し、田代島に住んでいるほとんどの猫たちの状態を詳しく把握することができていますので、この話題に触れようかと思います。

で、何匹いるか?

その前に・・・(^^ゞ
大体の方が田代島の猫の数を見積もる時に、低めに見ているのではないかと思います。
その理由は3つ。

1つ目は、訪問した時期・気候・時間帯によって、あまり猫に会えない時があると言うこと。
例えば、今年の夏頃は、昼間仁斗田の港の周辺にはほとんど猫がいませんでした。例年なら番屋で寝泊まりしている大網漁の漁師さんやおかみさん達がいなかったこと、それから津波ですべてのものが流されて港に何も無かったために猫たちがねぐらにするような場所も無かったためです。
また、夏の暑い時間帯には、猫たちはどこか日陰の涼しい場所にひっこんでしまいますので、歩いている猫に出会える確率はぐっと減ってしまいます。
夏の間の港付近では、早朝の時間帯しか猫を見かけることはありませんでした。
たとえば、この写真は8月後半のある日の午後3時頃の港の風景。何もありません。猫もどこにもいません。
田代島猫景色(続編 34) 田代島の猫の数は?_d0149713_3173019.jpg


こちらは同じ日の早朝。漁師さんたちが資材を置いてサカナを網から外す作業をやっているので、猫たちが集まってきています。
結構いるでしょ。全部で何匹いるかな?
田代島猫景色(続編 34) 田代島の猫の数は?_d0149713_3182785.jpg


1枚目の写真を見ると、ごみがたまっているラインがあるのがわかりますでしょうか?
実は地盤沈下のために、ここまで海水が浸水してくるのです。
ごみがたまっているところが満潮時の波打ち際。つまりここより海よりには物を置けないのです。朝は岸壁の際までカゴや道具を持って行って作業しますが、終わったらまたキレイに片付けなければなりません。だから、猫が昼寝をできる場所も無かったのです。

ちなみにこちらの写真は11月の上旬。
田代島猫景色(続編 34) 田代島の猫の数は?_d0149713_3193178.jpg

ニャンプロのブログでガレキの間で子育てしている姿が紹介されていた「ハチ」とその子供達。秋以降は、こうしたガレキや資材の間で「ハチとチョビゲ一家」や先日記事に書いた「3匹の仔猫」たちが港周辺で暮らしています

さて、2つ目の理由。それは、猫達の行動範囲の違いです。猫によっては、とても行動範囲が広くて、朝は港でサカナをもらい、昼は集落の間を行き来して、夕方は上の方のお宅でご飯をもらっている猫もいます。一部でとても人気があった「ネイチャー」なんかは典型。島の中をあちこち歩き回っていると、「あれ?港にいたはずがこんなところで?」と出くわすことも多々ありました。
逆に言うと、行動範囲がとても狭い猫もいるのです。ご飯をもらっているお宅の庭先からほとんど外に出ず、ほぼ一日そのお宅の周辺のごく限られた範囲で生活している猫もいます。こういった猫は、ほとんど出会う機会がないので、カウントされることが少ないのです。

3つ目の理由。それはそっくりで見分けが付かない猫が大勢いることです。田代島の猫たちの模様は、黒白が一番多く、それから黒ネコ、キジトラ、サバトラで、三毛やチャトラはほとんどいません。(ぱっと見は黒白だけれど、よく見ると茶色の毛が混じっていて、う〜むこれは定義上は三毛になるのかな、という猫は結構いますが。(^^ゞ)
その中で、有名になったジャックや金太郎、あるいは校長先生(ゴンザレス)、港のボス猫だったヒメや人気のねこ太郎ことタロウ、最近人気急上昇中のハナタロウ、の様に特徴がある猫はすぐに区別が付きますが、そっくりで見分けが付かない猫たちは、実際の数よりも少なくカウントされます。例えば上の写真、ハチの仔猫4匹のうち、黒くてもじゃもじゃの仔猫、この写真では全員一緒に写っているので3匹いるなとわかりますが、べつべつに出会ったら区別が付かず、1匹だと思うかもしれません。
僕は以前から、田代島の猫たちのかなりの個体識別をしてきました。また、猫たちの健康管理・医療サポートのために、得意の写真を活かしてデータベース化したカルテを作っているので、現在相当数の個体識別ができています。それでも、「あれ・・?」「え〜っと・・?」「う〜ん・・?」という事は結構あります。(^^ゞ

やっぱり一番難しいのは黒ネコさん。
例えばこの黒ネコ。風邪を引いて鼻水を垂らしています。(ピンぼけ写真でごめんなさい)
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クレスさんが抗生物質の注射をして1ヶ月後に良くなっているかと会いに行ったら・・・
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ちょっと良くなったかな?でもまだ鼻水出ていますね。
と書きましたが、実はこの2枚は別の猫です。気が付いた人はえらい!2枚目の猫、左前足を見てください。爪が出てるでしょ。
実は2枚目の猫は、左前足の人差し指の爪が出たまま戻らなくなって、みんなに「キャプテンフック」と呼ばれている猫なんです。
この2匹とも、同じ所に住んでいて、同じようにここしばらく風邪を引いて鼻水垂らしています。なかなか別の猫だとは気が付きません。(^^ゞ
まあ、このようにそっくりで見わけが付かない猫が結構います。その結果「ダブルカウント」ならぬ「レスカウント」されているわけですね。

まあ、以上のような理由で数が少なくカウントされることもあるのです。
前置きが長くなりました。(^^ゞ 
で、何匹いるか?

2011年秋の段階で、田代島には、約110〜120匹の猫がいます。
これは間違いありません。

9月と10月に、田代島の歴史が始まって以来初めて、猫たちにまとまって集団予防注射をしました。
同じ猫に2回してしまわないように、注射した猫の個体識別を行いながら、一匹一匹・・・大変だったんですよ〜。9月の時はものすごい猛暑で、熱中症になりそうでクラクラしながらでした。
で、予防注射できた猫が約80匹。
その時点でまだ仔猫で若すぎたので予防注射をしなかった猫が約10匹。
それから、どうしても嫌がって予防注射をさせてくれなかった猫が約20匹。
これで110匹です。これらはすべて識別できた猫たちです。
そして、仮にまだ識別できなかった猫が10匹いるとして120匹。
田代島には、現在大体これぐらいの数の猫が暮らしています。(^_^)v

先日も書いた様に、今年の田代島は仔猫に恵まれた年になりました。
また、例年なら11月頃には風邪を引いて具合が悪くなった秋生まれの仔猫を見かけることが多いのですが、暖かかったことと、予防注射や風邪の手当がうまくいったのでしょうか、先日は、ほとんどの「秋ッコ」の元気な姿を見かけることができました。
今週辺りからぐっと冷え込んで冬本番。仔猫も大人の猫たちも、元気に冬を越せるよう、見守っていきたいと思います。

最後にちょっと予防注射の件に触れておきます。
9月10月に、かなりの強硬スケジュールで猫たちの集団予防注射を行いました。その背景には、石巻でパルボが発生したという事情がありました。
石巻に住む友人の愛猫の具合が悪くなり、パルボと診断されたという話を聞いたのが、8月上旬ごろ。まさか?と思いましたが、石巻動物救援センターの現場責任者をされていた阿部動物病院の阿部先生に詳しくお話しを伺ったところ、確かに石巻市内で猫パルボが発生し、相当数の猫たちが病院に運ばれていることがわかりました。
その時点で、僕は青くなりました。パルボウイルスは土のあるところで繁殖し、靴に付着して人間の移動で感染場所を広げます。万が一パルボウイルスが田代島に侵入してしまったら・・・。急いでクレスさんおよびニャンプロのみなさんと協議して、可能な限り早く予防注射を行うことになったのです。
幸いなことに、石巻の猫パルボはその後沈静化に向かい、10月後半の時点では、ほとんど感染する猫もいなくなったとのことです。
ひとまず何よりです。
なお、予防注射や虫下しなどの薬の準備に際して、クレスさんが客員診療をされている白金高輪動物病院の近藤副院長に大変お世話になりました。ありがとうとございました。

終わりに1枚。
小春日和の午後の日射しを浴びながら、ぺったんこですやすや寝ている若ねこさん。
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by naochago | 2011-12-08 03:41 | 田代島猫景色 続編


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